記憶

ある巫女姫の記憶

「また、お逢いしましょうね」

高句麗の姫

姫が私に教えてくださったことは

はかりしれず

美しく光り輝き、愛を伝えること

いのちひとつで生きてゆくこと

 


たった一瞬の邂逅で

光輝く永遠の未来を

我らに

そしてこの地にもたらして下さった

 


大国のお姫様が乗っているとは思えない

飾り立てた様子の全くない

無駄がなく洗練された船から

天上の、地上の、

この世総ての美を全て集めて

人の形にしたような姫が現れた時

光輝く春風に花が舞う

 


我が国の男たちは

構えていた武器を全て棄て

いのちひとつで生きてゆく

ということの真を

骨の髄から思い知った

 


姫の訪れこそが奇跡

 


いのち果て 眠りにつき

悠久の時を超え

美しい春風の気配に

魂 目覚める

 


あの時、今生で

お会いすることは もうない、という事は

貴方様もわかっておられた

それでも

「またお逢いしましょうね」と言ってくださった

「次にお逢いするときには いのちひとつ 共に生きられるように」と、誓った

 


やっと光と出会い

時は満ち

誓いを果たす

 


高句麗の姫

あなたの存在がもたらして下さった

今この時

私は深く深く感謝をしています

 


共に生きることができる

喜び、奇跡

今はじまる

いのちひとつ 共に

 

 

 

 

月夜の海

広く 大きく あたたかい 背中
異国の海で ひとり 佇む
蒼い風のひと

寝静まった 仲間たちへの
海の向こう 故郷へと
想い馳せ
誰にも 見せぬよう
一筋の涙を流す

その双肩にかかる
決して 軽くはない
志、覚悟
その背中が 遠いまなざしが
物語る 悲願

その優しさに
胸に秘めた想いに
ただ 寄り添いたかった

本当は 一緒に行きたかった
連れて行って欲しかった
あなたも 残ることはなく
私がついていくことも
できなかった

旅立ち 最期の晩
「涙を見せた女は生涯ただひとり」
と 一度きりの抱擁
叶うことのない 想いに
ただ 涙が溢れました

私にとって
生涯ただ一度の
そして最期の恋でした

永い 永い
時を超え

また お逢いできた
奇跡、喜び

愛しい蒼いひと

私がわかりますか
私を憶えていますか

今度こそ 寄り添い
新しい未来へ
あなたの隣に立ち
今度こそ
最後まで 共に